組織の課題を見立てるには?~セルフ・キャリアドックの手法から

「組織の人材育成に課題を感じているが、どのように課題を見立てればいいの?」
「従業員の個々の課題には気付いているが、何がボトルネックかがわからない」
という悩みをもつ経営者やリーダー層の方々もおられるのではないでしょうか?
そこで今回は、セルフ・キャリアドックの手法をもとに、「組織の人材・経営課題の見立て方」をご紹介します。


セルフキャリアドックとは?

セルフ・キャリアドックとは、改正職業能力開発促進法(平成 28 年 4 月1日施行)を受け、厚生労働省が、平成 28 年度より開始した「企業内における従業員のキャリア開発の取り組み」です。従来の対個人のキャリアコンサルティングとは違い、組織と個人の双方に働きかけ、協働できる部分を増やし、人と組織のWin-Winの関係作りをつくることを狙いとしています。

厚生労働省は、セルフ・キャリアドックを次のように定義しています。

「企業が、その人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取り組み、またその企業内の「仕組み」のこと」

厚生労働省(2017)「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開(ページ2)

参照:厚生労働省ホームページ

セルフ・キャリアドックは、若手社員・中堅社員・シニア社員・子育て中の社員など、あらゆるレベルで実施され、従業員のモチベーション向上・職場定着、キャリア自律の環境づくり、上司のマネジメント力向上に効果があるとされています。

▶詳細は、厚生労働省(2017)「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開にて。


セルフ・キャリアドックのプロセスは?まずは、「見立て」から!

セルフ・キャリアドックの標準的なプロセスは、①人材育成ビジョン・方針(企業が何のために、どのような人材を育成したいのか)の明確化、②計画の策定、③社内インフラの整備、④セルフ・キャリアドックの実施、⑤フォローアップという5つのステップによって行われます。

セルフ・キャリアドックを始めとし、一般的に組織への働きかけを行う際は、まず「組織を見立てる」ことから始まります。

ここでは、セルフ・キャリアドックの人材育成ビジョン・方針の策定のプロセスで活用されている「組織の人材育成課題の見立て方」の基本的なステップをご紹介します。


組織の人材・経営課題の見立て方

情報収集

まずは、組織内の人材課題を中心に情報を入手し、ソフト面とハード面の情報を整理していきます。この段階では、マッキンゼーの7S(McKinsey 7S framework)のフレームワークを活用し、経営資源の7つの要素を整理していくと良いでしょう。

参照:株式会社ハートクエイク「マッキンゼーによる組織の7Sとは?また、その使い方は?」より引用

経営資源の7つの要素(マッキンゼーによる組織の7S)

  • ハードのS:組織構造、戦略、システムなど、企業内で制度化または明文化されているもの(例:経営戦略、人材育成方針やビジョン、教育研修体系、キャリア形成支援、人事制度、物理的環境など)
  • ソフトのS:価値観・文化・人間関係など、比較的見えにくく、変更に時間がかかるもの(例:風土、文化、人の意識やモチベーション、思い込み、前提、コミュニケーション)

情報収集においては、ウェブサイトや報告書、または就職四季報や会社四季報などで入手できるものと、インタビューやヒアリング、または職場観察などから収集するものがあります。

特に、組織の風土や文化はなかなか捉えにくく、主観が入りやすいので、組織診断サーベイや、従業員のカルチャー診断などのツールを使用することもお勧めです。

▶弊社でご案内可能な組織診断ツールは、こちら


3つの視点から情報を整理する

情報収集した後は、以下の3つの視点から情報を整理していきます。

【情報整理の3つの視点】

1)経営や人事担当としての課題

2)従業員がかかえる課題

3)組織の環境要因

たとえば、新入社員の早期離職に課題を感じている企業の場合:

  1. 経営・人事担当としての課題:採用コスト増、組織の士気低下、生産性の低下、企業の評判・口コミの低下、など
  2. 従業員が経験している課題:キャリアの展望がみえない、上司・先輩のパワハラ、放置、心身の疲弊、プレッシャー、スキル不足、など
  3. 環境課題:OJTやOff-JTの未整備、新入社員のフォローアップ施策のなさ、柔軟性のない人事制度、PCなどの業務上のツールが古い・不具合がある、など

情報を整理しながら、組織診断の結果などの「量的な指標」や、従業員へのインタビューから得られたコメントなどの「質的なエビデンス」があるかに気を付けます。このような質的・量的なエビデンス(ファクト)があると、社内での理解やコンセンサスが得やすいでしょう。


システムとして問題を捉える

従業員・組織・環境要因を把握した後に、これらの問題・事実・環境要因がどのように関連し、組織の悪循環をつくりだしているのかを探ります。この段階では、「システム思考」を活用することをお勧めします。

システム思考とは、「複雑な状況下で変化にもっとも影響を与える構造を見極め、さまざまな要因のつながりと相互作用を理解することで、真の変化を創り出すためのアプローチ」です。

チェンジエージェント

システム思考のアプローチを適用する上では、「ループ図」を作成し、問題のメカニズムの仮説を図で表現することもおすすめです。ループ図は、問題を俯瞰し大局を捉え、複数の事柄の相互作用を明確化し、問題を維持している悪循環(ループ)を把握するためのツールです。

▶ループ図の作成方法などについては、こちらのサイトなどもご活用ください

ループ図を作成し、打ち手を検討する上で注意すべきは「悪者をつくらない」ということです。例えば、部下に過度なプレッシャーをかけている上司が要因とみえる際にも、「上司が悪い」という結論で終わらせるのではなく、「上司がそうせざるを得ない事情や背景(業績向上へのプレッシャー、目標値の不明瞭など)」は何か、そして「組織として」どのように解消していけるかを考える視点をもつことが重要です。


ゴール・方針を設定する

問題のメカニズムを明確化にした後は、いよいよゴール(あるべき人材像・育成ビジョンや方針の策定)を行います。以下のような整理シートに、課題と方針をまとめていくと良いでしょう。

ここで重要なのは、「あるべき人材像や育成方針を、経営理念と紐づける」という視点です。もし、人材ビジョンと経営理念に整合性がない場合は、経営理念を再度見直す、または経営理念とは別に、企業のバリュー(行動指針)を設定する・見直すことも必要です。

また、ここで設定した人材育成ビジョンや方針は、採用広報活動にも役立てることができます。育成ビジョンや方針を採用要件に反映させ、自社の求める人材の獲得につながるよう、他部署とも連携し、対外的な広報にも役立てます。

今回は、セルフ・キャリアドックの手法を活用した「組織の見立て方」についてご紹介しました。弊社では、組織の人材課題の整理に関するコンサルティングも行っていますので、ぜひご相談ください。

また、厚生労働省による「キャリア形成サポートセンター」事業では、企業や組織へのセルフ・キャリアドックの導入を支援しています。ぜひ、興味のある方はご活用ください。