コロナ禍で注目が高まる「インターナル・コミュニケーション」とは?
コロナ禍で働き方が変化する中、「インターナル・コミュニケーションをもっと強化したい」、「急に上司から社内コミュニケーション施策を考えてと言われた」という広報・人事担当の方もいるのではないでしょうか。
今回は、インターナル・コミュニケーションの定義や特徴、また多くの企業が抱える課題について紹介していきます。
インターナル・コミュニケーションとは?
そもそもインターナル・コミュニケーションは何でしょうか?
実は、その定義は数多く存在し、唯一これが正しいというものはありません。これは、インターナル・コミュニケーションが、特に欧米の企業を中心に、その組織特有の課題・風土・制度の中で発展してきた所以かもしれません。
日本においては、PRSJ(日本パブリックリレーションズ協会)が以下のような定義を紹介しています。
「社内コミュニケーションともいう。社内報、社員公聴会など、円滑なインターナル・コミュニケーションにより、「職場の連帯感と相互信頼」「社員への企業理念の浸透、共通認識と価値観の醸成」「社員の活性化」「新しい体質と文化の創造」「社員の声が経営トップに届くボトムアップ経営」などの成果が生まれる。」
引用:PRSJウェブサイト
このように、インターナル・コミュニケーションは、従業員同士のヨコのつながりや、経営者とのタテのつながりを円滑にする潤滑油のような役割をもち、更には、組織風土の醸成や価値創造を後押しするエンジンのような役割をもつといえます。
インターナル・コミュニケーションの特徴と要素
今回は、暫定的に「インターナルコミュニケーション」を以下のように定義してみます。
インターナル・コミュニケーションとは
「主に経営者・役員・社員など、組織を構成するメンバー間で行われるコミュニケーション。組織の理念・目的の浸透や、情報共有、組織文化の醸成や社員の活性化など、何らかの意図や目的をもって、組織のメンバーの双方向のやりとりを促進させる活動やしくみづくりなどを指す」
この定義には、インターナル・コミュニケーションを行う上で考慮したい次のような特徴が含まれています。
- 対象
インターナル・コミュニケーションは、経営者・役員・社員など組織を構成するあらゆるレベルのメンバーが対象となります。逆に、パブリシティ活動や、株主などを対象としたIR広報は含まれず、あくまで組織内に特化しているものといえます。 - 目的・意図
組織内のコミュニケーションは常に自然発生的に起こっているものです。インターナル・コミュニケーション「活動」においては、ある目的に基づき、このコミュニケーションの流れ・量・質・チャネル・対象などを、意図的に設計していくものです。そして、目的・意図は、組織の理念や事業の方向性に紐づいている必要があります。 - 方向
一方通行の情報の伝達ではなく、経営者・役員・社員間の双方向のやりとりを促進させるものであることが理想です。特に、働き方が多様化している現代では、正社員だけでなくパートタイムやフリーランスなどのメンバーも含める視点も重要です。 - 方策
インターナル・コミュニケーション活動は、単体の取り組み(社内報制作、トップメッセージ発信など)と、それらの諸活動を統合させた「しくみ」づくりを行い、持続的なコミュニケーションの循環をデザインしていく視点が重要です。
みんな悩んでいる!インターナル・コミュニケーションの課題
インターナル・コミュニケーションの重要性はわかるけど、実際は進めるのが難しい。
対外広報と比べて、いつも後回しになってしまう・・・というのが担当者の本音ではないでしょうか?
インターナル・コミュニケーションは実際にどのくらい浸透し、企業はどのような課題を抱えているのでしょうか?
約8割の企業が、インターナル・コミュニケーションに課題
2016年の調査では、約8割の企業が、社内コミュニケーションに課題を感じているという結果が報告されています。特に、大企業においては「大いにそう思う」と回答する企業が4割近くに上り、規模が大きくなると社内コミュニケーションに難しさを感じていることがわかります。
内容別でみると、「部門・事業所間」のコミュニケーションや、「経営層と社員間」の壁、また、「部長とメンバー」など組織のタテ・ヨコのあらゆる領域で課題があるようです。また、回答者のほぼ全員が「(コミュニケーション不足は)業務の障害になる」と認識しており、社内におけるコミュニケーション不足や不全がもたらす業務への影響に対し危機感を抱いているようです。
参照:HRPro「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告」
どうしてインターナル・コミュニケーションが進まないのか
では、どうしてインターナル・コミュニケーションの導入や促進は難しいのでしょうか?
導入が進まない背景には以下のような理由が考えられます。
■インターナル・コミュニケーションの重要性にトップが気付いていない(人員・リソースが得られない。優先度が低い)
■従来のトップダウンのコミュニケーションスタイルや、縦割りのコミュニケーションを変えることができない
■広報・人事・経営企画など部署横断の体制づくりや、推進者となりそうな従業員の巻き込みが難しい
■戦略の立て方がわからない、成果をどのように測定したほうがよいか分からない
・・・
インターナル・コミュニケーション活動は、企業の歴史・風土・体制などとも深く関わる活動であるため、部署横断での息の長い取り組みやコミットメントが必要です。自社のリソースだけでは難しい場合は、この分野に精通した外部コンサルタントや、組織診断サーベイや、デジタルツールなどを取り入れることも助けになるかもしれません。
コロナは、インターナル・コミュニケーションのピンチかチャンスか
最近の調査においては、リモートワークの導入など働き方の変化を受けて、「仕事におけるコミュニケーションの質と量が悪化した」と回答したビジネスパーソンの割合が約半数(47.2%)という結果も報告されています。
参照:アドタイ「幸福学の第一人者に聞く!コロナ禍に「幸福度」を上げる4因子とは?」
多くの企業が、コロナ禍での新たな働き方に対応した「オンラインと対面でのハイブリッド型のコミュニケーション」のあり方を模索していることがわかります。
しかし、見方を変えると、新型コロナウイルス感染症の拡大により、(メディア活動やマーケティングPRと比較し)これまで「後回し」にされがちだったインターナル・コミュニケーションに光があたってきたとも言えます。
また、コロナ禍で既存の事業戦略を見直したり、人材の流出入を経験した企業にとっては、企業理念の浸透や、新たなメンバーの育成などを目的に、インターナル・コミュニケーションを強化していく良いきっかけとなるかもしれません。
今回は、インターナル・コミュニケーションとは?という切り口から、定義や課題について探っていきました。次回は、インターナル・コミュニケーションがもたらすメリットについて紹介していきます。